ペットを飼うメリット・デメリット!これから動物と暮らす人のために知ってほしいこと

ハリネズミ

ペットを飼うことで「心が癒される」「毎日が楽しい」「元気になる」など、数えきれないほどメリットがあります。一方で「思っていたよりお金がかかる」「家を留守にしづらい」「匂いがする」「毛が抜ける」など、さまざまなデメリットがあるのも現実です。

飼育が負担になり「飼わなければよかった」「誰かに譲ってしまいたい」と思うことが絶対にないとは言えません。そしてその時にもっとも不幸なのは、自分自身で行き先を決められない「ペット」

少しでも不幸なペットを増やさないためにも、これからペットを飼いたい方にペットを飼う「メリットとデメリット」をお伝えします。お迎えする前にやっておきたい「心の準備・環境の準備」と合わせて紹介していきます。(執筆者:伊藤悦子)

 

ペットを飼うたくさんのメリット

ペットと暮らすメリットは、触れ合うことで元気になり、ペットの眠る顔を見ているだけでも癒やされことです。ショックなことや悲しいことがあっても「ペットがいるから乗り越えられる・頑張れる」ということもたくさんあります。

動物好きな人にとって、家にペットがいる暮らしは想像以上に豊かで、喜びがいっぱいな生活になります。「そのメリットは数えきれない」といってもいいでしょう。

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飼育は大変ですが、毎日たくさんの癒やしをもらっています。

心が癒されるのは気のせいではない

「ペットがいると癒される」と飼い主の多くが口にしています。哺乳動物や小鳥の体温に触れると心も温かくなり、それだけで安心するもの。ハ虫類や魚類が大好きな方は、ただ眺めているだけでも、なんとなく気持ちが落ち着いてきますよね。

人の心が癒されるのは決して気のせいではなく、科学的根拠があります。人と犬が視線を合わせて交流を深め、そして触れ合うことでオキシトシンというホルモンが双方に増加することがわかりました。
(参考:オキシトシンの効果

オキシトシンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、母と子の絆だけでなく人と犬などペットとの絆、人と人の絆を深めるのにも重要な働きをしているホルモンです。
(参考文献:オキシトシンによるヒトとイヌの関係性

信頼関係を形成し、「ストレスの緩和」「アルコール摂取量を抑える働き」もあるといわれています。ペットといると癒されるのは、決して気のせいでないことがよくわかります。

また、「熱帯魚の水槽を眺める」だけでもリラクゼーション効果があります。眺める時間が長くなることで人はリラックスでき、ストレスが緩和されることも明らかになりました。(参考文献:アクアリウムによるストレス緩和効果

水族館でクラゲのふわふわ泳ぐ姿を見ていると「気持ちが落ち着いてストレス解消になる」ことありませんか?金魚や熱帯魚を飼うことも多くのメリットがあります。

ペットがいると病気にかかりにくくなり、治りやすくなる

ペットを飼っている人は飼っていない人に比べ、病気にかかりにくい。かかったとしても治りやすいというデータが実際にあります。また、以下の研究結果が発表されていました。これらを見ると、ペットを飼うメリットについて注目されていることがわかります。

研究結果

  • 心筋梗塞にかかった人の1年以内の死亡率は、犬を飼っている人のほうが低い(アメリカブルックリン大学の研究)
  • ペットを飼っている人のほうが、手段的日常生活動作能力(※IADL)がよく、犬や猫を長く飼っている人は降圧剤を飲む割合が低い(日本の研究)
  • ペットを飼っている人は飼っていない人に比べて、1年以内に病院にかかる回数が少ない(アメリカカリフォルニア大学の研究)

IADLとは,BADLの身の回り動作(食事,更衣,整容,トイレ,入浴等)・移動動作の次の段階である。具体的には,買い物,調整,洗濯,電話,薬の管理,財産管理,乗り物等の日常生活上の複雑な動作をいう。  基本的日常生活動作として、katzらは「入浴、更衣、移動(ベッドから椅子)、食事」の4項目を、kaiらは「入浴、更衣、排泄、起立、食事、失禁」の6項目を、Tsujiらは「食事、更衣、排泄、入浴」の4項目を使用している。

参考:厚生労働省

ペットを飼育している効果とは異なりますが、動物が好きな終末期のがん患者さん6名のもとを犬が訪問した研究報告があります。

犬と触れ合った結果、患者さんたちからは「症状や痛みを忘れることができた」「喜びを感じた」「癒しを得た」「気持ちが晴れた」というポジティブな結果が得られました。ペットと触れ合うことで気持ちが晴れ、体も元気になるというメリットがあるのですね。

毎日お世話をするから「規則正しい生活」ができる

ペットがいると朝早く起きるようになり、規則正しい生活を送るようになります。ペットのお世話は毎日休みがなく、待ったなしです。犬なら朝夕の散歩は、よほどの悪天候でないかぎり欠かせません。

ごはんをねだる猫、デグーやモルモット、ハムスターや小鳥たちにも起こされます。飼い主が夜型の場合はペットも夜型になることもありますが、基本的には規則正しい生活になるでしょう。

リスを飼ったことがきっかけで、生活リズムを取り戻したという興味深い研究報告がありました。ペット飼育が奏功した長期留年生の一例です。

留年を繰り返していた男子大学生が朝起きれず、全身倦怠に見舞われ、学業の意欲も低下。ところがリスを飼い始めたらリスが毎朝6時に起こすようになり、大学生は起きて世話をするようになります。

だんだん生活リズムが整い、大学にきちんと通えるようになって、最終的にはめでたく卒業もできたとのこと。リスのような小さな生き物でも、存在感の大きさを感じることができます。病気になりにくいことや回復が早まるのは、規則正しい生活になることも関わっているかもしれません。

家族やパートナーとのコミュニケーションが増える

「今日は○○ちゃんがこんなことしたよ!」ペットのカワイイしぐさや行動は共有したくなるものです。険悪な親子ケンカの途中でも、犬が寝言を言ったりモルモットがエサをねだってキューキュー鳴きだしたりすると、その微笑ましさに「ケンカは一時休戦」ということも実際あります。

口論になると間に入り、双方をなだめようとする犬もいるのでケンカもしづらいですね。会話が減りつつある夫婦でも「猫のことなら報告してしまう」、しぶしぶでもペット用品のことなら相談して一緒に買いに出かけるなど、夫婦関係の危機をペットが救っている面が少なからずあるのではないでしょうか。

社団法人日本ペットフード協会の「平成28年(2016年)全国犬猫飼育実態調査結果」で「ペットを飼う効用」を飼い主さんに質問しました。それによると16歳未満の子供の場合、「家族とのコミュニケーションが豊かになった」という回答が60.7%と高い割合になっています。

夫婦間でも「夫婦の会話が多くなった」58.6%「夫婦の関係がなごやかになった」45.3%と半数の人が夫婦関係にペットの飼育がよい影響を与えたと回答が得られました。(参考:社団法人日本ペットフード協会

ペットを飼うデメリットは「お金」「時間」「部屋の汚れ」だけではない!

デメリットでよく知られているのは「お金がかかること・留守にしづらいこと・部屋が汚れたり臭くなったりすること」。お金は思っている以上にかかることがあります。
(参考:デグーと暮らすデメリット

また、人獣共通感染症にかかる確率が高くなる。ペット依存症になる可能性もあるなど、飼い主さんの生活を大きく脅かす場合があることを知っておいてください。

ペットと暮らすには思いのほかお金がかかる

「フード代・消耗品代・ペットたちの生活用品代」「光熱費・治療費」などの出費があり、思ったより高額になることも。(参考:デグーの電気代

「デグー・ハリネズミ・モルモット」を紹介されるとき、「体が小さく食べる量も少ないからフード代がかからない」と書かれている場合があります。

しかし、小さな哺乳類たちのフードは手に入りにくいものも多く、安売りもほとんどありません。Amazonや楽天などの通販で買う場合は送料もかかってきます。

犬や猫、「デグー・モルモット・チンチラ」などの小さな哺乳類たちは「急激な温度変化に弱く、暑さ寒さに弱い」という特徴があります。特に日本の夏の暑さは生命の危機に直結します。

生まれたばかりの頃や高齢になったときは、さらにしっかりした温度管理が重要です。1日中エアコンを入れたままの日々が続くので、電気代がかなりかかることを覚悟しましょう。極端な寒さに弱い子も多く、夏も冬も請求書が高額になることも・・・

他にも「フード代・敷材のおがくず・猫のトイレ砂・ペットシーツ」など、消耗品のほかに「巣箱・寝床・マット」も劣化するので、定期的に買い替えなくてはいけません。

ペットたちは病気にかかったり、ケガをしたりすることも当然あります。動物病院での治療が必要になり、手術や入院することも。病気やケガはなくても、予防のために健康診断が必要になってきます。

犬や猫では避妊・去勢手術を受けたり、感染症予防のためにワクチンを接種したりとさまざまな医療費がかかってしまいますが、健康維持のためには必要なことです。

体臭や排泄物の臭いや抜け毛がある

動物特有の臭いがどうしても部屋にこもります。消臭剤を使っても、臭いに敏感なお客さんは「クサい!」と思っているかもしれません。排泄物はもちろん臭います。
(参考:デグーは臭う?臭わない?デグーの消臭・防臭・除菌対策

草食動物は臭いが少なめとはいえ、少しでも掃除を怠ると敷材にカビが生えやすくなり、夏場は特に臭いが気になるでしょう。抜け毛も避けることができません。

プードルやヨークシャーテリアでは比較的抜け毛が少ないと言われていますが、どうしても抜け毛はあります。こまめに掃除をして、ペットそのものを清潔に保つしか方法はありません。清潔にすることは、次に説明する感染症予防にもつながります。

人獣共通感染症に感染する危険もある

デグー

人獣共通感染症は「ズーノーシス」とも呼ばれ、動物も人も同じ病原体に感染する病気のことです。野生動物に接したり咬まれたりすることで感染するほか、ペットとの過度の触れ合いや、不潔な状態から人間に感染することがあります。

例えば「キスをしてしまう」「排泄物をあとでいいやとなかなか片づけない」「ペットに自分のおはしでごはんを食べさせる」のも禁物です。かまれたり引っかかれたりしたのを放置することで、「猫ひっかき病」「パスツレラ症」に感染する危険性も高まります。

これらの感染症は、たとえ動物が無症状でも人に感染すると「リンパ節が腫れる・傷む」などの症状が出ます。「カプノサイトファーガ・カニモルサス症」では、まれに敗血症や髄膜炎を起こすこともある怖い感染症です。

感染症にかかっているペットの便を片づけたあと、きちんと手を洗わずそのままごはんを食べたとしたら。運が悪いと便中の病原体が人間の口に入る可能性もあります。感染すると胃腸症状が出たり、風邪に似た症状が起きたりすることも。

ところが「食当たりかな?」「風邪かな?」と思ってしまいがちで、動物からの感染症とはなかなか気づかないこともあり、治療が遅れがちです。

感染症の原因になるペットは犬や猫だけではなく、「デグー・モルモット・チンチラ・オウム」などさまざまなペットがいます。病気も以下のようなたくさんの病気があげられます。

病気の例

  • 真菌症(真菌によっておこる皮膚感染症)
  • リンパ球性脈絡髄膜炎
  • サルモネラ症
  • レプトスピラ症
  • ライム病
  • オウム病

もちろんペットを飼っていればぜったい移るわけではありませんが、注意することは重要です。ペットと暮らしていく上で、感染症にかかるリスクが少なからずあることはデメリットといえるでしょう。

ペットへの強い依存が生活満足度を低下させることも

ペットを溺愛することで、飼い主さんの幸福度が低くなることもあります。いつもべったり一緒にいるため「出かけていてもペットが気になってたまらない」、ついには買い物にすら出かけられないという状態です。

「ペット以外は興味がなくなる」さらにはペットが自己の一部になることもあるようです。「ペットかわいさのあまり依存してしまう」こともあるということを知っておきましょう。

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ペットと暮らしてから遠出が減りました・・・これもペット依存かも!?

ペットを飼うときの心理に「寂しさを埋める」ことがある場合、依存しすぎないようにしたいものです。グリーフ(悲嘆)カウンセラーでもある獣医師(吉田千史先生)は、ペット依存について次のようにおっしゃっています。

飼い主はペットに依存することなく精神的に自立することが必要です。しかし、飼い主の一部には、自分がペットの主人であることを忘れてペットと共依存的関係に陥り、共倒れと なってしまうケースが見られます。

参考:現代のペット事情~ペットに関するトラブルと諸制度

ペットを飼うその前に。ペットをお迎えする準備はできていますか?

「今日は疲れた」といってペットたちのお世話を休むことはできません。また、ペットが病気になったら動物病院に連れて行く必要がありますし、病気予防のために気をつかうのも飼い主さんの役目です。

動物の種類にもよりますが、数年から20年近く一緒に暮らすペットたち。人間はその間に「進学・就職・結婚」などさまざまなライフイベントの変化があることは十分予想できます。さまざまな変化があっても最期まで面倒を見ることができるか考えてみてください。

ペットが飼える家であること

ペット飼育禁止の家ではペットを飼えません。内緒で飼うとトラブルの元になりますし、存在を隠して飼い続けることは飼い主さんもペットにも大きなストレスになります。

集合住宅の場合、住人のなかには「ペットが苦手な人」「アレルギーがある人」もいる可能性を忘れないようにしたいです。小鳥や金魚ならOKと思っても、大家さんや不動産会社に確認しておく必要があります。

ペット飼育可の集合住宅でも、ペットの「種類・大きさ・飼育頭数」に制限があることも。自宅がペット飼育可なのか、規定はあるのかなどの確認を忘れないでください。

ペットと触れ合う時間があること

一人暮らしで猫を飼うこと

「忙しくてペットにはかまっていられない」「朝から晩までペットだけが留守番」「最低限のお世話しかできない」という環境は、ペットにとって幸せではありません。特に群れで暮らす習性のある動物にとって、一人ぼっちで過ごす時間が長いことは大変ツライはず。

「猫は1匹で留守番ができるから大丈夫」と思いがちですが、近年の猫は人とのコミュニケーションが以前より発達し、変化をしているといわれています。

猫が想像以上に人の「感情・表情」を理解していることもわかっており、その分「分離不安」にもなりやすい猫も増えているようです。

「静かだし、散歩もいらないから留守番が長くてもいいだろう」「人には慣れてないから放置しても大丈夫」という理由で安易にペットを飼うことは、ペットにとって不幸な結果になりかねません。(参考資料:なぜネコは伴侶動物になりえたのか

留守が長いと起きること

  • 猫の空腹時間が長すぎる
  • 排泄物をなかなか片づけてもらえず不潔になる
  • かまってもらえない寂しさでストレスが溜まりやすくなる

ペットを飼うことに家族全員賛成していること

「家族に反対する人がいるけど飼い始めれば好きになる!」と飼いはじめ、好きにならないこともあります。そうなるとお世話もお願いできないですよね。

アレルギーの方にとっては苦痛でしかありませんし、症状がひどくなると飼い続けることは困難です。家族のなかで険悪なムードになり、大切なペットを人に譲ることを検討することになりかねません。

「家族の同意が得られていること」「アレルギーの人がいないこと」は重要ポイントです。(参考:もしかしてデグーアレルギー!?かゆみとくしゃみの正体・原因

転勤や引っ越し予定がないこと

多くのペットは環境の変化や移動に弱く、強いストレスを感じやすいもの。転勤が多い仕事、引っ越し予定が入っている方は見合わせる勇気も必要です。

移動に飛行機を使う場合、ペットは貨物室で過ごすことになります。航空会社もペットの移動にはさまざまな工夫やサービスをしていますが、温度や音の影響があることはあらかじめ知っておきたいポイントです。

豆知識

フレンチブルドッグやシーズーなど、吻が短く暑さに弱い犬種は、夏場5月から10月まで搭乗できません。(参考:ANA「ペットをお連れのお客様向けサポートについて」

一人暮らしではないこと

一人暮らしで病気や入院など突然のトラブルがあったとき、ペットの世話ができなくなる危険性が高くなります。現在一人暮らしで飼っている方は、もちろん対策をされていると思います。

しかし外出中、仕事中に災害が起きたら?真夏に停電になってしまったら?家の中で飼い主さんが倒れてしまったら?「そんなことを心配していたら何もできない」と思うかもしれません。

ただ、何かあったとき真っ先に犠牲になるのはペットであることを頭に入れておいてください。寂しいからという理由でペットを飼うのではなく、十分準備をして「本当に飼えるかどうか」考えてみることは大切なことです。
(参考:一人暮らしのデグー飼育について

いつかは別れが来る覚悟をしておくことも大切

ペットたちの命は、私たち人間より短いことがほとんど。飼う以上はペットの一生を最期までしっかり面倒を見るという気持ちが必要です。高齢になり介護が必要になる動物もたくさんいます。

高齢期になると飼い主さんのことを忘れてしまうかもしれません。また、お別れした後はペットロスになってしまうことも・・・「それでもペットと幸せに暮らせる」という気持ちが、ペットを飼うには欠かせないことです。
(参考:ペットロスの乗り越え方!ペットとの別れや寂しさを克服するためには?

ペットを飼うメリットやデメリットは人間からの目線

「ペットを飼うことはムリそうだ」と思ったら、ペットのためにもあきらめる勇気が必要かもしれません。
(参考:飼育は簡単ではない!小動物たちと暮らすときの注意点

しかし一緒に暮らせる環境を整えていけば、ペットと暮らすことも可能になります。大事なのはメリットとデメリットを知ること。デメリットを知らずにペットをお迎えするとお互いが不幸なことになりかねません。

両方を知った上でお迎えすれば、ペットにとっては自分の特性を理解してくれている温かい家庭と暮らせることに繋がるのではないでしょうか。