デグーの特徴と言えば、長くてフサフサした尻尾ですよね。
しかし、デグーの尻尾はとてもデリケートで切れやすいということをご存知でしょうか。
尻尾が切れる瞬間に遭遇したら、飼い主は応急処置や治療はどうしたらいいのか。今回は我が家で起きた『3つの尻尾、抜け落ち事件』をご紹介します。(執筆者:上田絵美)
デグーの尻尾はデリケート
はじめてデグーをお迎えしたとき、ペットショップからいくつかの注意事項を聞きました。その中でも、とくに気になったのが「決して尻尾は掴まないでください」と教えてもらったことです。「デグーの尻尾はデリケートで切れやすいんです。」と教わっても、こんな立派な尻尾が切れるの?と半信半疑でした。
「尻尾を掴んだら一体どうなってしまうのか?」、「尾が切れるとはどんな風になるのだろう?」、「トカゲのようなイメージ?」まったく想像がつかないまま、いつのまにか忘れていました。
第一の事件「ココの尻尾が無い」
最初の異変に気が付いたのは、我が家のデグー「ココ」でした。ふと気が付くと、フサフサだったココの尻尾の先端が無いのです。その頃、丁度サンタという伴侶を迎えたばかり。
あまりにも仲が良く、ずっと2匹の世界にしていて気が付くのが遅くなってしまいました。あわてて傷口を調べてみましたが、すでに血は止まり、乾燥して膿んでいる様子はありません。本人も痛がっていないので、そのまま様子を見ることにしました。
自分で噛んだのか・・・
毛づくろいの段階で切れたのか・・・
相方が誤って尻尾を踏んだ拍子に切れてしまったのか・・・
今となっては原因は分かりません。
後に娘のモモが生まれ、そのモモがココの切れた尻尾をおしゃぶりしていたことは、以前の記事で述べました。
(参考:デグーが尻尾をかじる!多頭飼いデグーのしっぽを守る方法)
おしゃぶりされた傷口から血がにじむことがありましたが、ココは痛がる素振りもしなかったので、尻尾自体は痛みの少ない部分なのかもしれません。それは、のちの第二の事件でも感じたことです。
第二の事件「飼い主の不注意」
ある日、モモのケージの掃除中にうっかりケージを開けっ放しにしてしまい、モモが脱走してしまいました。慌てて手を伸ばしたその先に、モモの長くて立派な尻尾があったのです。その瞬間、ぷつんと音を立てて抜けてしまいました。ぷつん、いや、ズルンに近いかもしれません。
忘れたくても忘れられない衝撃的な出来事でした。今でもその時の感触が残っているほどです。最初は自分が何を持っているのか、それがモモの尻尾だと認識するまで、数秒かかったかもしれません。
我に返った私は、怪我をしているモモを捕獲しました。このとき役に立ったのが、三晃商会「ジャバラトンネル」です。
ジャバラトンネル
小動物用の遊び道具です。デグー以外にもフェレットやハリネズミなどもトンネルをくぐって遊べます。入ってくれない子もいるみたいですが、気に入ってくれる子もたくさんいます。
とにかくジャバラトンネルが大好きな我が家の子達は、見せるだけでおもしろいように吸い込まれていきます。通称「デグーホイホイ」です。これのおかげで、モモを安全に捕獲できました。緊急時にこういう物があると本当に助かります。
簡単に確保できたものの、すでにモモは血だらけです。ひとまず、隔離用の容器に移すことに。使っていない水槽を綺麗に洗い、古着などの布を敷きつめ、血だらけのモモをそこに移しました。
モモの立派な尻尾は、根元5~6センチを残して、血だらけの骨がむき出しになっていました。とにかく止血しようと、濡れたティッシュで優しく包み込み、何度も拭きました。
しかし、血が滲み出てなかなか止まりません。
モモは不思議なことに一言も鳴きませんでした。骨が剥き出しになった尻尾を気にすることもなく、「どうしてこんなところに閉じ込めたの?」と不満そうでした。
ひとまずモモを落ち着かせて、さらに自分も落ち着かせることに。クリクリとした瞳を見ていると、何てことをしてしまったんだと、深い後悔の波が次から次へと襲い掛かってきます。そうこうしているうちに、モモの血は乾いて止まったようです。
ずっとこうしているわけにはいかないので、モモが使用するケージを丸洗いして、消毒することにしました。これ以上怪我がひどくならないようケージ内を以下のようにしました。
ケージ内の消毒
- 1ステップ、ホイール類はすべて外す
- 2隅々まで除菌シートなどでふき取る
- 3寝床も綺麗な布を用意して、傷口からの化膿を予防
ケージ内を動き回るたびに、尻尾から血が滲みましたが、本人は痛がる様子もなくケロッとしています。その無邪気な姿が、より私を後悔の念に追い込んでいきます。翌日、病院へ連れて行き、診察を受けることに。
そのときの尻尾の状態は完全に血は止まり、白い骨が剥き出しになった状態でした。先生がおっしゃるには、このままの状態で放置してよいとのこと。一週間もすれば、剥き出しの部分は小枝のようにカラカラに乾燥して、最後はポキッと折れてなくなるようです。
抜けた尻尾の部分が化膿するということは殆どないということで、ホッとしました。ただ、「決して薬を塗ったりしないように」と念を押されました。たしかに薬を塗るとデグーが舐めてしまう可能性がありますよね。
先生の仰ったとおり、モモの剥き出しの骨は徐々にカラカラにしなびれて、数日後にポキッと折れてしまいました。残念なことに、折れて無くなってしまったデグーの尻尾はトカゲの様には生えてきません。
第三の事件「息子までもが…」
この記事を書いている最中にそれは起きました。我が家ではケージ下のペットシーツをゴミの日に片付けています。そのゴミの日に、サンタと息子のノビのケージの引き出しをあけると、茶色の「筆」の先のような物が落ちているではありませんか。
チモシーの穂の部分が、デグーの尻尾のように見えてドキッとすることありませんか?茶色なのは、チモシーの穂が変色したものかと思いました。
しかし、そう思って拾い上げると、なんと本物の尻尾の先でした。
慌てて、親子の尻尾を調べました。すると息子の尻尾の先がありません。先だけちょろんと白い骨が剥き出しになっていました。血は出ていませんでしたが、まだ乾燥してなく、抜けたばかりなのでしょう。
二匹が喧嘩をしていたという事実もなかったので、「毛づくろいの最中に抜けたのか」、「サンタに踏まれて尻尾が抜けてしまったのか」ということになります。
もし、サンタが踏んで抜けたなら、ココの尻尾もサンタが踏んだ可能性があります。
サンタはおっとりした性格です。動きも遅いので、相方の尻尾をうっかり踏んだまま、ぬぼーっと立っていたのかもしれません。その踏まれた状態から、勢いよく走り出せば、簡単に抜けてしまうはずです。
これで母親であるココ、娘であるモモ、息子であるノビの三匹が、尻尾が切れたことになります。偶然だと思いますが、何とも不思議です。
尾切れ後の対応について
我が家では3つの事件がありましたが、尻尾が切れるのは、人為的な場合とそうでない場合があります。人為的な事件は努力で避けられますが、デグー自らが起こしてしまった事件は避けにくいです。どちらにしろ、デグーの尻尾が切れてしまったら以下の対応を参考にしてみてください。
対処方法
- 1まず、飼い主が落ち着く(これが一番大事)
- 2個体の安全を優先する(ケンカなどの場合、すみやかに隔離します)
- 3怪我の状態を把握する(血が出ているか否か。出ているなら軽く止血します)
- 4ケージ内を清潔にする
- 5ステップやホイールといった物は、患部が完全に止血するまで外す
- 6薬は塗らない
- 7乾燥して自然に折れるまで見守る(1週間~10日程度)
「骨剥き出しの尾を切断する方法」を勧められる飼い主さんもいらっしゃいます。ただ、できればこれ以上デグーに恐怖や苦痛を与えなくて済むように、尾の切断はせず、乾燥して自然に折れるのを待ちたいものです。自宅でも治せるので、以下の記事を参考にしてみてください。
(参考:デグーの尻尾の怪我 – 単純な尾切れ・尾抜けは自宅でも治せる)
ネットで対処法を調べていたら「尻尾が抜けた直後なら、差し込めば元通りになる」と書かれているブログを拝見しました。実際にやってみましたが、当然のごとく無理でした。
もう一度言いますが、一度抜けた尻尾は元通りになりません。
しかし、尻尾が短くなってもデグーが愛らしい事に変わりありません。抜けた尻尾にアロンアルファなどをつけて差し込むのはもってのほかです。絶対にやらないでください。
不慮の事故に対応できる判断力と行動力を!
不慮の事故は、どの飼い主さんにでも起きうることです。事前に対策をとっていたとしても、予期せぬ事態が起きることがあります。そんな時に一番大切なのは、飼い主さんの冷静な判断と適切な行動です。
そして、二度と同じ過ちを繰り返さないという強い決意が必要です。いざというとき慌てないためにも、普段からデグーを診てくれる動物病院を探しておくことをお勧めします。デグーはエキゾチックアニマルです。エキゾチックアニマルを専門に診てくれる病院が安心でしょう。
自分で判断が付かない時は、動物病院に電話をして助言してもらうのもいいと思います。
デグーの動物病院の探し方は以下の記事を参考にしてください。
(参考:デグーの動物病院選び5つのポイント!かかりつけは2軒あると安心)
怪我をしたデグーは、安全に確保する手段を講じる必要があります。これ以上怪我をひどくしないために、隔離できるような入れ物(キャリアケージでも可)があると便利です。
我が家のジャバラトンネルのように、これなら必ず確保できるという手段を準備しておきましょう。以下の動画はケージの入口をトントン叩くと戻ってきてくれるデグーたちです。このように普段から訓練することもオススメです。
デグーに何かあったときに冷静な判断と行動をとるためには、飼い主も勉強が必要です。デグーの生態について1つでも2つでも知ること。飼育本やデグー飼い主さんのブログを読んだりして、様々な知識を吸収すること。
デグーの飼育本
現在発売されているデグーの飼育本は「はじめてのデグーの育て方」、「デグー完全飼育: 飼い方の基本からコミュニケーションまでわかる」の2つになります。デグー飼い主ならどちらか一冊は持っておくことをオススメします。
大切な命を守るために、できることをするのが飼い主のつとめではないでしょうか。とくに、今回のようにデグーの尻尾が切れてしまった!という話しは、私が知るかぎりデグーの事故でもっとも多い事故です。どう対処すべきか?あらかじめ知っておくことは非常に重要なことだと思います。